赤信号

信号無視した自転車の交通事故 自動車の過失割合は?

1.突然自転車が飛び出してきた!?

Aさんは、仕事が終わり午後10時ごろ自動車を運転し、自宅へ帰っていました。いつも通る交差点付近は、街路灯や照明入りの看板等の光源により一定程度明るく見通しが良いものでしたが、昼間に比べると相当程度暗く、Aさんが運転する自動車からは横断者を見つけにくい状態でした。Aさんは、交差点の信号が青に変わったことから左折しようとしましたが、急に赤信号を無視し横断歩道を自転車で渡ろうとしていたBさんが出てきたため、Aさんは自動車をBさんに衝突してしまい、Bさんは怪我を負い、Aさんの自動車は破損してしまいました。

 

道路を通行する歩行者及び車両等は信号機の表示する信号に従わなければならないということは道路交通の基本的なルールです(道路交通法7条、道路交通法施行令2条)。しかし、Bさんは信号の赤色灯火に従わず、かつ、前方左右を注視して道路の安全を確認することなく横断歩道を渡ろうとしたため、本件事故が発生してしまいました。

このようにBさんが赤信号を無視し、前方左右を注視し安全を確認しなかったことからすれば、本件事故の発生に係る過失割合はBさんが10で、Aさんが0になると考えられる方が多いかと思います。

以下では、自転車の赤信号無視による交通事故の過失割合について解説していきたいと思います。

 

2.過失とは何か?

過失とは何かと質問された場合、みなさんはどのように説明されますか?

日常用語の過失とは、不注意のことをいいます。広辞苑ではあやまちやしくじりと説明されています。しかし、法的な意味での過失の意味は異なってきます。法的な意味での過失とは、注意義務違反をいい、予見可能性を前提とする結果回避義務違反を内容とします。つまり、交通事故における過失の有無というのは例えば、Cさんが自動車を運転して細い通学路を走行していた場合、Cさんはそのことを認識していたのですから、通学児童が飛び出してくることを予見することができたし、自動車を衝突させれば死亡することもあり得ることは予想することができました(これを予見可能性といいます。)。そのため、速度を制限速度以下に落とし、前方を充分に注視して運転するなどして結果を未然に回避すべき業務上の注意義務があったといえます(これを注意義務といいます。)しかし、Cさんはこの注意義務を怠り、漫然と時速60キロメートルの高速度で前方不注意のまま運転し、児童に自動車を衝突させてしまい、脳挫傷によって死亡させました(これを結果回避義務違反といいます。)。

このように、過失とは特定の場面において求められる注意義務違反を指します。法的な意味における過失は日常用語における場合の意味とは異なります。

 

3.過失はどのように判断されるか

過失の有無は、抽象的にいえば一般標準人が問題の場合におかれたら行うべき行為を加害者が行ったか否かで判断されます。そして、そのような義務の存否は損害発生の可能性の程度や侵害された利益の重大性という被害者の事情と、侵害結果を回避する義務を課すことによって犠牲にされる加害者側の利益などを総合的に衡量して判断されます。もっとも、公共施設などから被害が生じた場合に加害行為の社会的有用性や公共性を考慮に入れてよいかどうかについては考え方に違いがあるので注意が必要です。交通事故における過失割合についてはこれまでの裁判例を参考にしてパターン分けされた基本的な過失割合が定められています。

また、生命・身体・健康に深刻な被害が生じるような事例では、裁判所は加害者に最善の注意を求め、義務が高度化する傾向にあります。しかし、交通事故の事例では、他人が法規に従う適切な行動に出るのであろうと信頼して行動すれば過失はないとする信頼の原則というものがあります。この原則によると、右折車線の右側からのバイクの追い抜きのような交通違反行為まで予見して結果回避措置をとる義務はないとした例もあります。

 

4.自転車の赤信号無視による交通事故の過失割合は10対0!?

1.でご紹介した事例では、Bさんは信号の赤色灯火に従わず、かつ、前方左右を注視して道路の安全を確認することなく横断歩道を渡ろうとしたため、本件事故が発生してしまいました。

このようにBさんが赤信号を無視し、前方左右を注視し安全を確認しなかったことからすれば、本件事故の発生に係る過失割合はBさんが10で、Aさんが0になり、Aさんには過失はなかったとも考えることができます。

しかし、赤信号無視による自転車の交通事故の過失割合は、基本的には自転車が8で自動車が2とされています。そのため、過失割合は10対0にはなりません。なぜなら、自転車は自動車と比べ車体が小さく、スピードも出ず、安定性もありません。そのため、自転車は自動車と比べて著しい交通弱者であるという理由によりたとえ自転車が赤信号を無視したとしても、自動車を運転する者が0で、自転車を運転する者が10というに過失割合にはならないのです。

ちなみに、自動車同士の事故や自動車とバイクの事故などでは、赤信号を無視した側の過失が10になり、相手方の過失は0になります。

 

 

5.自転車には過失割合の修正要素もあります

上記で説明したとおり、交通事故における過失割合についてはこれまでの裁判例を参考にしてパターン分けされた基本的な過失割合が定められています。しかし、交通事故を一概に言っても状況がすべて同じというわけではありません。そのため、基本的な過失割合の基準によってすべての過失を認定すると不都合が生じます。そこで、公平性を保つためにも過失割合の数値を修正すべき事情を考慮した上で過失を認定することになります。過失割合の数値を修正すべき事情を修正要素といいます。

修正要素には、さまざまな種類があり、代表的なものとして①夜間、②児童、高齢者、③見通しのきく交差点などという要素があります。

①夜間(日没から日の出まで)では、昼間に比べると相当程度暗いため人の存在が目立ちにくいため、歩行者や自転車の過失が5%加算される場合があります。また、②児童、高齢者は、判断能力や行動能力が一般人と比べると低下していることが多いため交通弱者として扱われ、特に保護すべき対象とされています。そのため、この場合の過失は5~10%減算されます。最後に③見通しのきく交差点では、優先車両側の過失が10%程度減算される場合があります。

1.で紹介した事例では①の夜間と③の見通しのきく交差点という特殊な事情がありました。そのため、本事例においても過失割合の修正要素が存在することになります。

このように、過失割合には様々な修正要素があります。したがって、すべての自転車との交通事故における過失割合は8対2になるわけでないのでご注意ください。

 

6.自転車の運転手が信号無視を認めない場合は?

自転車の運転は、誰でも免許を取得することなく行うことができるため、自動車を運転する場合と比べると自賠責や任意保険に加入していない場合が大多数です。そのため、自転車と自動車の交通事故が発生した場合には、通常示談で解決されます。

しかし、自転車の運転手が赤信号無視を認めない場合は、示談での解決が困難になることが予想されますので、ドライブレコーダーや信号サイクル表などの証拠を収集、保存することをおすすめします。また、警察の実況見分調書や供述調書も示談交渉をするにあたっては重要な証拠となるため、交通事故が発生した場合には、必ず警察を呼びましょう。

 

7.まとめ

以上、説明したとおり法的な意味における過失は日常用語の過失とは異なるため、その過失の認定においても専門性を有する場合があります。

赤信号を無視した自転車の運転手とのあいだにおける交通事故の過失割合について納得出来ない方は、弁護士に一度相談しましょう。