玉突き事故の過失割合とは?責任の所在をわかりやすく解説

玉突き事故
過失割合

交通事故で最も多いのが同方向に進む車同士の追突事故です。そして、渋滞中などには、連鎖的に追突事故が起こる玉突き事故が発生することもあります。交通事故では過失のある当事者が責任を負うことになりますが、玉突き事故の場合には誰がどのように責任を負うのでしょうか?ここでは、玉突き事故の責任や過失割合について、被害者が知っておきたい基本的な事項を説明します。

1. 玉突き事故では責任の所在がわかりにくい

1-1. 玉突き事故とは?

自動車を運転中、玉突き事故に巻き込まれることがあります。玉突き事故とは、後方から来た車に追突された勢いで車が前方に押し出され、前にいる車に追突してしまう事故のことです。交通事故の中でも最も多いパターンが追突事故ですが、玉突き事故は追突事故が重なって起こるものになります。

2台の車が関係する通常の追突事故とは違い、玉突き事故には少なくとも3台の車が関係しています。特に、多数の車が列をなしている渋滞中には、車が連鎖的に追突してしまい、4台以上の車が関係する玉突き事故が起こることもあります。

1-2. 交通事故の保険金額は過失割合で増減する

交通事故は民法上の「不法行為」に該当するため、交通事故の加害者は、被害者に対して損害賠償責任を負います(709条)。ただし、被害者にも過失がある場合、「過失相殺」の規定(722条)により、加害者の損害賠償金が減額されることになっています。

実際の交通事故では、被害者側に全く過失がないとされるケースは少なく、被害者側の過失の程度に応じて損害賠償額が減額されます。損害賠償額を計算するときには、まず、加害者と被害者がどのくらいの割合で過失を負担するかという「過失割合」を決め、過失割合にもとづき損害額を割り振ります。たとえば、損害額が1000万円、加害者対被害者の過失割合が8対2のケースでは、被害者の受けられる賠償金の額は800万円となります。

1-3. 玉突き事故の過失割合はわかりにくい

2台の車が関係する交通事故の過失割合については、これまでの裁判例をもとに基準がまとめられており(「民事交通訴訟における過失相殺の認定基準(別冊判例タイムズ)」など)、実務上も過失割合の判断がしやすくなっています。一方、玉突き事故のように3台以上の車が関係する事故では、2台の車の事故のように基準が明確ではなく、過失割合の判断が難しくなっています。

以下、玉突き事故の責任や過失割合について判断するときの基本的な考え方を説明します。特に、玉突き事故の被害者となった場合に、加害者側から適正な賠償を受けられるよう、最低限の知識を押さえておきましょう。

2. まずは追突事故の基本的な過失割合を押さえておこう

2-1. 特に理由がなければ追突された側には過失がない

玉突き事故の過失割合について考える前に、2台の車の追突事故の過失割合についてみてみましょう。駐停車している車に別の車が追突した場合には、追突した車(後方車)の過失が100%となり、駐停車している車に過失はありません。駐停車している車は追突を避けることができませんから、当たり前のことと言えます。同様に、走行中の車に追突した場合でも、後方車の過失が100%とされます。

道路交通法では、前の車が急停止しても追突を避けられるよう、車間距離を保持することが義務付けられています(26条)。つまり、追突事故は車間距離を十分とっていなかった後方車が原因ということになります。追突事故が起こったときには、特別な事情がない限り、後方車が100%責任を負うのが原則になります。

2-2. 前方車に過失があるとされるのはどんなケース?

追突事故では追突した後方車の過失が100%となるのが原則ですが、例外的に前方車にも過失が認められるケースがあります。前方車の過失が認定されるのは、以下のようなケースです。

2-2-1. 前方車が急ブレーキをかけた場合

前方車が急ブレーキをかけた場合には、後方車が追突してしまうのも仕方がないことがあります。道路交通法では、危険を防止するためやむを得ない場合を除いて急ブレーキが禁止されています(24条)。前方車が必要もないのに急ブレーキをかけた場合には、前方車にも過失があることになります。

なお、前方車が急ブレーキをかけた場合でも、後方車が十分な車間距離をとっていれば、事故が回避できます。前方車が急ブレーキをかけたとしても、後方車の方の過失が大きいことには変わりありません。具体的な過失割合は状況によって変わりますが、前方車の過失は10~20%とされるのが一般的です。

2-2-2. 高速道路を走行中の追突事故

高速道路というのは、遅くとも80kmくらいの高速走行が前提となっています。また、一般道路と違い、高速道路では、駐停車も原則的に禁止されています。こうした事情から、高速道路上の追突事故では、後方車の過失が100%とはならず、前方車にも過失ありとされます。具体的な過失割合はケースバイケースですが、前方車に40%程度の過失が認められるのが一般的です。

3. 玉突き事故の場合も2台の追突事故と考え方は同じ

3-1. 玉突き事故でも原則的に最後尾の車の過失が100%とされる

2台の追突事故では後方車が100%の責任を負いますが、玉突き事故の場合も同様、最後尾から追突した車の過失が100%となるのが原則です。たとえば、信号待ちで停車中の車に突っ込んで玉突き事故を起こした場合、前方車が何台であっても前方車には過失はなく、追突した車が100%の責任を負います。

3-2. 玉突き事故で前方車に過失があるとされるケース

前方車の急ブレーキが過失となる点についても、2台の追突事故でも、3台以上の玉突き事故でも同様です。たとえば、前方からA車、B車、C車の順で玉突き事故が起こった場合、A車やB車が急ブレーキをかけたせいでC車が追突したのであれば、急ブレーキをかけた車に過失が認められることになります。

なお、高速道路上の玉突き事故では、停車していただけでも過失とされることがあります。たとえば、前方車がハザードランプなどもつけずに停車していたことにより、後方車が急ブレーキをかけて玉突き事故が起こった場合には、停車していた前方車にも過失が認められます。

4. 玉突き事故で保険金を受け取る前に注意しておくべきこと

4-1. 交通事故では保険会社から過失割合が提示される

交通事故に遭った場合には、過失割合がどう認定されるかによって、損害賠償金額が増減します。交通事故の過失割合は、事故後に自動的に決まるわけではありません。実況見分を行う警察にも過失割合を決める権限はなく、過失割合を判断して決める権限を持つのは裁判所だけになります。

実際には、交通事故の多くのケースは、裁判を行うことはなく、示談によって解決されます。そして、示談交渉の際には、損害賠償金を支払う加害者側の保険会社から過失割合が提示されます。保険会社の提示する過失割合は絶対ではありません。けれど、被害者が保険会社の提示する過失割合に納得して示談成立となれば、保険会社の決めた過失割合に従って保険金が支払われることになります。

4-2. 玉突き事故の被害者は保険金が減額されることがある

玉突き事故の被害者は、最後尾から追突した車に100%の損害賠償金を請求できるのが原則です。しかし、何らかの理由で自らの過失が認定されると、損害賠償金が減額されてしまいます。玉突き事故の場合には、2台が関係する事故以上に、過失割合の認定が難しくなっています。「保険会社の言うことだから間違いないだろう」と納得のいかないまま示談に応じてしまうと、保険金が減額され、被害者側は十分な補償を受けられないことがあります。

4-3. 玉突き事故の被害者になったら弁護士に相談

玉突き事故の被害者であるにもかわらず、保険会社から過失を主張され、損害賠償金の全額を払ってもらえないような事態になったなら、速やかに弁護士に相談しましょう。玉突き事故の責任や過失割合を決めるのは簡単ではありません。保険会社は裁判所ではありませんから、保険会社が提示する過失割合が適正とは限らないのです。

弁護士が依頼を受けた場合には、過去の裁判例から同様のケースを洗い出し、玉突き事故の適正な過失割合を導き出した上で、保険会社と示談交渉を行います。示談が成立しない場合でも、弁護士は裁判までの対応が可能ですから、納得のいく損害賠償金を獲得できる可能性が高くなります。

5. まとめ

玉突き事故に巻き込まれた場合でも、自らの過失が小さいことや過失が全くないことを証明できれば、保険金額が増えることがあります。玉突き事故で保険会社に納得のいく金額を払ってもらえずに悩んでいる方は、交通事故に強い弁護士に相談するのがおすすめです。

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